残りタイム1時間59分ゴールは確実であるが歩けばタイムオーバーである。
目標タイムの12時間切りが残り10Kmを残して虚しく過ぎてしまう。
ここまで来てタイムオーバーは今までの苦労が水の泡である。
それといつ走れなくなるかと思うと走らざる得ない。
けれどももう足が言うことが効かなくなっている状態で待つ止まってもおかしくない状態である。
歩いて開放されたらどんなに楽になるか、棄権したい・・・・。
しかし周りを見るとほとんどのランナーが歩いている。
中にはSNSをしたり通話もしている・・・そんなに余裕があるのか?
みんなここまで来て諦めるのか?
歩きたい気持ちと葛藤しながらゆっくりであるが走る。
周りも暗くなり時計の確認も容易でなくなりひたすらゴールに向かって走るだけである。
エイドでは各ランナー全員に蛍光ライトを渡されている。
いよいよ夜RUNの始まりか・・・。
引っ掛けるところもなく邪魔だが手に持つしかない。
朝の暗闇を走るのはよくあるがレースで夜の暗闇を走るのは初めての経験で少し屈辱的でもある。
90Kmを過ぎてからは足の動きが一段と悪くなり無理やり腕を振って走る。
本当に苦しい道のりで1Kmの長さを実感する、依然と止めたい気持ちでいっぱいである。
98Km地点、今まで降ったりやんだりの天候が急変し集中豪雨に会う。
あと2Kmでゴールやのにもう少しもってほしかった。
周りも完全に暗くなり街灯も全く無く、前のランナーの姿が見えなくなり蛍光ライトだけが揺れている。
ランナーと言ってもほとんどが歩いている、ここまで来ると歩いてゴールしてもタイムオーバーにはならないのである。
カーブ毎には車が配備されヘッドランプを照らしている。
本当に山の中という感じである。
集中豪雨は止む気配もなくランナーを叩きつけ視界も奪われる。
山ゾーンも終わり残り1Km、問題の上り坂ゾーン+下りゾーン。
思えば確か17年前の同レースでも12時間を切るべく動かない足を無理やり使い気合いだけで猛ダッシュしていたことが
思い出される。
今回も13時間30分を切るべく同じことになるとは思いもよらなかった。
しかし雨の雫で時計の確認もできず、今何時かもよくわからない。
わかっているのは歩いてもタイム制限に引っかることはないということである。
それでも走る私である、最後くらいは格好良く走ってゴールしたいものである。
登り坂では依然と集中豪雨、走っているランナーは一人もいない。
ただ一人だけ奇声を発して登っている自分がある。
ペース的には早歩きのほうが早いくらいだと思うのだが今の足ではそれでも精一杯である。