Diary    『スーパーサイヤ人からあしたのジョーへ』   8/10

              「いや、2回目なんです。ただ、去年は68Kmでタイムオーバーですけど・・・。初めてですか?」
              「いや、俺も去年走って13時間半タイム制限ギリギリやった。周りは真っ暗やった。
              今年はもしかして明るいうちにゴール出来るかもしれんなー。」「すごいですね、完走したのですか。
              確か去年は台風でスタート時間が30分遅れたにもかかわらず、ゴール時間は同じで本当に
              ギリギリだったんですね。」「俺もちょっと走ってみようかな。あんたのお陰で走る気にもなった。」
              「けれども私はもう限界ですよ。今にも吊りそうですから・・・。このままこのペースではしっています。」
              とこんな調子で怖そうなおっさんと一緒に走ることになったが、94Km地点ぐらいから走っているのに
              おっさんはとっとと早歩きで置いて行かれてしまった。またやんけー。と思いおっさんに必死に付いて
              行こうとしたが、そこまで付いて行ける足の余力は残っていなかった。やっぱり1回完走したヤツとは
              一味も二味も違うもんやなとつくづくと実感させられた。けれどもおっさんのお陰でだいぶペースが
              上がってきた。本当におっさんが言っていた通り12時間以内で明るいうちにゴール出来る。
              残り、1時間!!キロ10分で走りきると、夢の12時間を切ることが出来る!!
              ラストパワー!!!いつもの周回コースの1.5倍、普段なら、30分以内で、走れるのに・・・。
              と気だけは先走っていたがやっぱり体は動かない。どんどんおっさんとの差は広がっていくばかりだ。
              背中は見えているのにだんだん小さくなっていく。待ってくれーー。


              97キロ地点、12時間まで、後20分キロ10分で走ってるようではとてもではないが、間に合わない。
              キロ6分30秒ペースで走らんなあかん。残り3Kmうおーーー。本当の意味の最後の
              パワーを俺にくれ。このまま一生足動かんかってもいい。この今だけ動いてくれ。頼む俺の足よ。
              太股の筋肉が冷え固まってペースを上げると筋肉が割れそうだ。両ふくらはぎも今にも吊りそうだ。
              腕も思うように振れない。おりゃー気合いじゃ俺の体よ目を覚ませ!本当の意味の
              「スーパーサイヤ人」はここから始まる。目つきが変わり、本気になったもう一人の私の姿が
              あらわになった。恐らく他人から見ると別人に見えると思う。俺のパワーはこんなもんじゃない。
              人間死ぬ気になったら何でも出来る。おりゃー、おりゃー。200mも走るとさっきのおっさんが
              早足であるいていた。「おっさん歩いとったら、12時間以内でゴールでけへんで、
              気合いじゃ付いてこい。俺に付いてきたら時間以内に走ってみせる。」
              よっぽど説得力があったのだろうか?もろに関西弁でしゃべったら「そやな、俺もスパートするわ。」
              とおっさんが走り出したとたん更に速いペースで走りよった。こんなところでおっさんに負けたくない!!
              いつの間にかお互いのプライドなんか捨てて、男同士の一対一の勝負になった。
              足の痛み、体のだるさ全てを忘れて、絶対に負けられん。という思いだけが先走っていた。
              多分おっさんも同じ考えだったのだろう。気合いじゃー。いつもは心の中でしか思っていなかったが、
              いつの間にか口に出していた。こうなったら、このおっさんに勝つためやったら何の恥じらいもない。
              ラスト1Km!!500mほど上り坂が続いた。確かこの上り坂を越えると残りの500mは
              下りでゴールや。そこで一気に突き放してやる!!!!!見てろおっさん。
              それにしてもこの上り坂はきつい。「おりゃー、おりゃー。気合いじゃー。」おっさんも負けずに
              「どりゃー、どりゃー」と叫ぶ。ちょっと違うぞ。と思った。そんなことはどうでもいい。
              何しか勝ってしまえばいいんや。しかしおっさんも一歩も引き下がらんみたいで、力は同格、
              いやおっさんの方が一枚上にも見えた。たいがいこういう状況になってしまうと、相手の方が
              上に見えることが多い。上り坂も終了し、残り500m!!体重の重心を前に傾け、
              足に力が掛けられないため、もう止まることも出来ない。

>>>> 前ページ

>>>> 次ページ

>>>> Diary Menu